株式会社ナウハウス
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ナウハウス所長の鈴木です。今何を感じ、どのように建築に向き合っているのかを伝えていければと思います。
ナウハウス一級建築士の高橋です。設計を通して感じたことや現場の進捗を気軽に綴っていきたいと思います。

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「掛川の家」の誕生
2008-02-02
「掛川の家」が完成し、2007年12月10日に引渡しをすることができました。この家のクライアントは、設計の依頼があったときは31歳という若さでした。最初にお会いしたのは2006年3月でした。「半年間、ナウハウスのホームページを毎日穴の開くほど見て、住宅の設計を依頼することに決めました」との言葉を聞いてナウハウスはスタッフ一同感激したことを覚えています。
 新しい住宅はこの若きクライアントの奥さん、お母さんとそのお母さんの4人の家族のための住まいを作ることでスタートしました。クライアントは設備機械の設計が専門でしたので、設計という作業をよく理解されていて、打合せは極めて精密でスムーズに進行しました。
ナウハウスでは家族全員に問診表を書いていただいています。そのなかで、「新しい住まいへの夢」や「10年後の夢」などを聞いたりしています。このクライアントの新しい住まいへのビジョンは「便利すぎずほんの少し緊張感をもって生活ができ、家族それぞれの趣味を楽しめる家」であり、10年後は「好きなバイクやオーディオ、絵画を楽しみ、家族全員が健康で楽しく暮らしていたい」というものでした。奥さんの夢は素敵なホームパーティを開きたいとのことでした。
豊かな住まいのイメージとは?の質問には「四季の変化や自然を楽しむことができること」とか、「個人の時間を持ち、家族それぞれがリラックスできる」とかお母さんは「お花がいっぱい」のイメージのようでした。
また墓参りはよくしますか?の質問には、それぞれ3ヶ月に一度とか2週間に一度とか一般の家庭よりもかなりの頻度で墓参りをされているようで、家族の絆の強さに感心いたしました。お父さんが若くしてお亡くなりになった事情がうかがえます。
要望を1番から5番まで重要と思われる順にあげてくださいとの問いには、若きクライアントは①災害に強い②デザイン性③プライバシーと防犯④必要最小限の設備と機能性⑤省エネで、その奥さんは①耐震②省エネ③防音と防振④日照と通風⑤アートフルな空間でした。お母さんたちは①耐震②耐久③バリアフリー④防犯⑤省エネということでした。新しい住まいを夢見る中にも、コントロールの利いた現実性を感じました。
この家の敷地のいちばんの特性は、10m南には天竜浜名湖線、ずっと南には東海道線と東海道新幹線が通っていることでした。天竜浜名湖線から南は工業地域で、田畑のなかに産廃処理施設やスレート葺の工場が見えます。3本の鉄道は3本の川のようなもので、鉄道は旅を誘う風物とも見えて、風景として悪くはありません。これらの鉄道や産廃施設とスレート工場はそのまま見ればとりとめもない風景ですが、大きな壁と庇で額縁を作って視界を限れば、一幅の現代絵画になるのではないかと考えました。
このクライアントは「希望する住宅のイメージ」として、日系ブラジル人のアーティストの大岩オスカール幸男さんの絵の特集号の雑誌をナウハウスに持参していました。建築雑誌の切り抜きを持参されることはよくありますが、画集を持参されるのは初めての経験でした。私が建築に目覚めるよりも絵に目覚めるほうがずっと先であったと思っていましたので、未知の画家であるオスカールさんの絵を「希望する住宅のイメージ」として提示されたときは、いつにない興奮を覚えました。大岩オスカールさんのことは、ブログのnauhaus鞘の内2006年10月3日(芸術の秋・収穫の秋)で触れたことがあります。オスカールさんはサンパウロ大学の建築学部を卒業された現代美術家で、「世の中のできごとの撮影された映像を見て情報を得ていることは、本当の現実の反射を見ていることではないか」と、様々な映像をシュールに組み合わせ、日常の風景を暖かい眼差しでユーモアたっぷりに無防備なタッチで描いている現代画家です。画家の見たイメージが時間をかけて描かれています。いたるところに見えるウイットがこの絵を支えています。とりとめのない風景を生け捕りにすることで秩序づけることができるのではないかと考えました。
この住宅の誕生の最大の危機は2007年初頭の中国の需要や石油の高騰による非鉄金属や合板類の急騰でした。予算にしたがってかなり詰めた設計をしていたので、コストダウンは困難を極めました。ナウハウスの設計は骨格で光と空間をデザインし、質実な建築材料しか使用していないのでコストが容易に落ちないのです。アスリートが筋肉を落として減量できないのと似ていて、建築の性能を落としてコストダウンをしたくないのです。良い建築を作ろうと何回もコツコツと積み上げ直してきた積み木を崩すのはたいへん苦痛な作業でした。このときこの若きクライアントはこのコストダウンをひとごとの問題としなかったことは今でも感心いたします。クライアントのコストダウンへの協力と忍耐と熱意が施工会社の責任者の気持ちをも動かし、着工へようやくたどり着いたのです。1ヶ月もの間、減額にエネルギーを費やし、終わった後は見積もり担当者とともにしばらく呆然としていたことを覚えています。

ヤフーバリューインサイトのアンケートによりますと、クライアントが設計者に望むことがあげられていました。
①生活動線や風通し、日当たりをきちんと考えた住みよい家を設計してくれて、わかりやすく説明してくれること。
②なぜこのコストがかかるのかを素人にもわかりやすい言葉できちんと説明できること。こちらが欲しいと思う機能・設備についてメリットだけでなく、デメリットも一緒に提示してくれること。安全な住宅を建てるために必要な条件と金額について、理由を含めて丁寧に説明できること。
③希望した間取りの、良い点や悪い点を指摘し、きちんとしたアドバイスをくれること。
④こちらの希望に耳を傾けるだけでなく、プロとして的確なアドバイスや設計者自身の考えを取り入れて、より生活しやすい住宅を設計できる人。
⑤打ち合わせをしていて苦痛にならない人。
⑥既に持っている家具などに最大限配慮した設計をしてくれる人。使いやすいつくり付けの収納や家具を設計できる人。
⑦使い勝手のよい、こちらが思いつかないような間取りを設計してくれる人。

「掛川の家」が竣工する少し前、この若きクライアントに男の子の赤ちゃんが誕生し、4世代の家族が住む家になりました。家の誕生と家族の誕生が重なり大忙しですが、こんなにめでたいことはありません。いろいろと大変なことがありましたが、「掛川の家」は当初からの夢をけっして忘れてはいないのです。減額は頭を絞らざるを得ず、この家の空間を厳しくすることに役立ちました。住まいは骨格さえしっかりしていれば、生活しながら家作りをしていけばいいと思っています。誕生には陣痛がつきものです。その痛みを乗り越えて生まれた子供には、痛みがあったからこそかけがえのないものとして、惜しみない愛情をそそいでいくことができるのだと思います。小さく(厳しく)産んで大きくそだてよという教訓は家作りにも当てはまります。「掛川の家」の誕生には危機もありましたが、若きクライアントはれを乗り越えることができました。出産も家作りも大げさに言えばこのいのちがけの経験だと思います。この経験によって新しい力を得て、「掛川の家」と共に、これからの長い人生をたくましく切り開いていかれることだろうと思います。
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