株式会社ナウハウス
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ナウハウス所長の鈴木です。今何を感じ、どのように建築に向き合っているのかを伝えていければと思います。
ナウハウス一級建築士の高橋です。設計を通して感じたことや現場の進捗を気軽に綴っていきたいと思います。

〒430-0817
静岡県浜松市南区頭陀寺町330−20
TEL.053-461-3408

「水平の庭]、「垂直の庭」、「頭陀寺の庭」
2006-07-26
ナウハウスのある頭陀寺町は豊臣秀吉ゆかりの土地として知られています。秀吉が木下藤吉郎という名前さえ無いころ、15歳から18歳(天文20年から23年)まで頭陀寺城の城主 、松下加兵衛之綱の父、長則に武家奉公していたと徳富蘇峰の「近世日本国民史」に出ています。この後、秀吉は織田信長に仕え、目覚しい出世をしていったことは太閤記にくわしく書かれています。
 20年後,之綱(ゆきつな)は長浜の秀吉のもとに招かれます。長篠の戦いに参戦し、3000石、6000石、ついには遠州久野城の城主16000石にとりたてられました。秀吉はかつての恩に報いると同時に、信頼して部下になってくれる之綱は願っても無い存在でした。また之綱のふたりの妹は、それぞれ夏目次郎左衛門吉信と中村源左衛門正吉に嫁いでいます。夏目次郎左衛門は三方原の戦いで徳川家康の身代わりとなって討ち死にした武将です。中村源左衛門は雄踏町の庄屋の中村家の当主で、徳川家康の側室お万の方がその中村家で結城秀康を生んでいます。 
 また驚いたことに之綱の娘のおりんは柳生但馬守宗矩に嫁ぎ、柳生十兵衛を生んでいます。その縁は之綱が松下常慶安綱の姉か妹を娶り、安綱と義兄弟であることが関係がありそうです。安綱の配下は家康の草創期の「影」の集団で、秋葉神社の神札配りに変装して各地を巡り、情報収集していたといいます。安綱の「奥勤」の意味は家康の身辺警護の意味で、台所奉行とはそんな役割だったのでしょう。その役職で信頼と実績を積んだ安綱の子孫は、代々直参旗本として、治安維持の役職の「火付盗賊改め方」を勤めています。「鬼平犯科帳」の世界です。
 さて、古文書によりますと頭陀寺は遠州きっての古刹で,703年に圓空上人によって開創された、とあります。ご本尊は薬師瑠璃光如来で、文武天皇により勅願寺に定められ、青林山頭陀寺と名ずけられました。「頭陀」とはサンスクリット語からの言葉でトュウダと読み、修行の意味だと広辞苑にあります。修行僧が首に下げている袋を頭陀袋(ズダブクロ)というのはご存知だと思います。863年、清和天皇により定額寺に指定され、現在の頭陀寺町に移ったのは1000年と記録にあります。古刹としてその時代の支配者の庇護を受け、戦乱のたびに焼失しては再興されています。今川、豊臣、徳川それぞれに200石を与えられ、江戸末期までは檀家を持つことはありませんでした。第二次世界大戦の空襲では三重塔まであった伽藍がすべて焼失してしまいました。
 ナウハウスが「頭陀寺の庭」を手がけたのは、70年代の都市化にともなう区画整理の道路によって境内と墓地が分断された頭陀寺のたたずまいをなんとかできないか、ということからスタートしました。私は「分断された」という受身の発想をやめ、この道路を通る人はみな頭陀寺にお参りに来てくれた人だと考えることにしました。ナウハウス一流の負けず嫌いのコンセプトです。時の流れに逆らわず、境内と墓地が分断されたことによって、かえって地域の人とお寺の交流を深めることができないかと考えました。蛇足ですが、ナウハウスのナウは「時の流れに負けないぞ」という気持ちをこめております。
 悪条件を逆手にとるために、道路を「内部化」するしかけを考え、境内と墓地が親しみの持てる場所にしなければならないと思いました。この計画は道路と敷地の「境界領域」だけを操作する前例のない計画で、建築というよりもランドスケープの分野の仕事でした。赤サビの鉄板による塀とRC造の白壁、道路に向いた池(池は内部方向を向くのが原則)と造園による構成は、狭い場所と限られた予算、檀家の理解を得ることから導かれた解決方法でした。
 境内は日常生活と密着し、寺としての日常行動があり、散漫で自由な、どこまでも広がる、水平的な意識の場であるという性格が強いと思います。いっぽう墓地では、人は死者を弔い先祖を偲びます。そこは命の連鎖を信じ、祈りという次元を超える飛躍がなされる場所であります。いわば水平的といえる日常生活が営まれる境内を「水平の庭」、祈りという垂直的な想像力が働く墓地を「垂直の庭」とイメージしました。
 かつて、そこは古びた万代塀によって囲われ、夜は暗く、人々が足早に通りすぎる所でした。境内と墓地を分断していた道路に、いまは閉塞感はありません。いったん道路に入ると、人の眼の特性によるフレーミング(額縁)効果や視差による遠近感、あるいは陰影効果によって、囲うことによって限られた空間が拡がっていることに気がつくと思います。
 正月に取り替えられる青竹は新年の訪れを教えてくれ、春のお彼岸には、「垂直の庭」の中心にあるしだれ桜が人を誘います。池にはめだかも泳いでいて、散歩の人々が一休みする場所となっています。もはや「頭陀寺の庭」を通る人は、すべてお寺に来てくれたと考えてもいいのではないか、と思うのです。
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