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ナウハウス所長の鈴木です。今何を感じ、どのように建築に向き合っているのかを伝えていければと思います。
ナウハウス一級建築士の高橋です。設計を通して感じたことや現場の進捗を気軽に綴っていきたいと思います。

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コンペの定点観測
2009-10-19
第10回JIA環境建築賞のコンペに「隙屋」を応募したところ、一時選考を通過したとのうれしい連絡が入りました。建築家の野沢正光さん、三井所清典さん、難波和彦さん、日建設計の大高一博さん、東京工業大学環境工学専攻の梅干野晁さんという錚々たる人たちが審査員です。書類審査の後、応募者立会いのもとに、審査員が二人一組で現地審査を行ないます。
「隙屋」の現地審査におみえになったのは三井所先生と難波先生です。お二人とも昔から新建築などで作品を拝見していて、勉強させていただいた先生です。審査でお会いしたのが初対面ですが、「アルセッド建築研究所」や「界工作舎」、「箱の家」はおなじみで、初めてお会いした感じがしませんでした。
午後1時半過ぎ、浜松駅でお迎えし、いろいろなお話をうかがいながら、クルマで三ケ日の「隙屋」まで向かいました。同乗のナウハウスのスタッフは「箱の家」の大ファンで、胸いっぱいになりながら、お二人のお話に耳を傾けていました。「隙屋」に着くとクライアントの建築カメラマンの小林さんが迎えてくれ、難波先生と「隙屋」のかどで、出会いがしらにお会いしました。うかがえば、難波先生はかつて小林さんに撮影をお願いしたことがあるとか。
まず外回りをご案内し、周囲の環境と「隙屋」の関係を見ていただきました。敷地を選択したいきさつから敷地の特性までを説明いたしました。凪を除いて、浜名湖からの風が常にあること、敷地の南西のヤマモモの大樹が冬の季節風を完全に防いでいることなど、ポイントを申し上げました。
ガラステーブル位置から「隙屋」の南立面を仰いで、離瓦の甍の波を見ていただきました。あいにくの天気で雨模様でしたが、瓦がしっとりとして離瓦がいっそう美しく見えていた気がいたします。
下屋から内部に入りました。広間上部の、排気のためのハイサイドライトの遠隔操作をお見せして、これが「隙屋」の空調の要であることをご説明いたしました。周囲の土間を一通り見て、2階のゲストルームをご案内しました。ここにはジョージ・ナカシマのコノイド・チェアと机があって、生前のジョージ・ナカシマから、小林さんが直接求めた貴重なものであることが話題になりました。2階からは和風の梁柱と洋組のトラスとの関係がよく分かります。2階の床剛性を高めるためのスノコのキャットウォークを通って2階上部からぐるりと「隙屋」の内部を俯瞰して、「隙屋」の「現代の納屋ぶり」を見ていただきました。 
最後に押入れの板戸を開けて地階の書斎に案内しました。海の光に向かってステージに出た後、その親密空間の説明をしました。再び地階の暖炉の周りに戻り、しばらく歓談しました。地階から伸びるトンネルから涼しい風が入ってきて気持ちがよく、時の経つのを忘れました。昨今の田舎暮らしの流行は、本当の農作業を知らない都会人の遊びかもしれないなど、田舎に埋もれきることの退屈さや厳しさに、話が盛り上がりました。本でしかお会いしたことのない二人の建築家のお話を、つぶさにお聞きできた幸運を感謝します。そればかりか、現役の設計者でしか気付かない着目に感激し、「隙屋」を理解していただいたことに感謝の気持ちでいっぱいです。たとえば、軒の長さの決め方、地階の天井と1階の床のぎりぎりの納まり、離瓦のを納めるためのハイサイドライトの位置、吹抜けの構造的弱点の解決方法など、工夫したと自負していたところを的確に指摘してくれました。難波先生からは「隙屋」は敷地条件を最大限に生かしたパッシーブハウスであるが、それにとどまらず、新しい技術も取り入れたさまざまな試みがあるとの指摘をしていただきました。10月2日の京都でのJIA大会の2時審査では、他の環境建築として工夫を凝らしたノミネート作品と並び、「隙屋」のパッシーブハウスぶりも評価していただき、いずれも知的な解決が図られていているとのお言葉を三井所先生からいただきました。
「隙屋」はいくつかのコンペに出し、入選と落選をともに経験しました。そうしているうちに分かったことは、審査されることを繰り返しているうちに、審査員側の評価軸、あるいは審査員が何が分かって何を見落としているか、究極には審査員の審査能力が、審査される側にもしだいに分かってくるということでした。これが私の言う「コンペの定点観測」という意味です。「隙屋」を通じて経験したさまざまなコンペの審査は真剣で厳しいものでしたが、それは私を確実に成長させてくれました。厳しい指摘をされたとしても、審査員が建築の設計者として生みの苦しみを知っているか否かが、審査される側にとっての共感を左右しているというのが実感です。
「隙屋」の現場審査のいきさつは、難波先生が2009年09月30日のブログで触れていました。簡潔な文章の中に「隙屋」の要点を理解していただいたことがうかがわれ、設計者としてそんな次元でコミュニケーションができたことをたいへんうれしく思いました。
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