ナウハウス所長の鈴木です。今何を感じ、どのように建築に向き合っているのかを伝えていければと思います。
ナウハウス一級建築士の高橋です。設計を通して感じたことや現場の進捗を気軽に綴っていきたいと思います。
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大工さんが正社員
2009-03-31
大工さんが正社員である建設会社が浜松にあります。建設会社で、大工さんが正社員と言うのは極めて珍しいのです。建設会社の大工はほとんどが別会社で、下職として入っているのが普通です。
飛鳥時代に創業した、寺院建築の金剛組は別格ですが、その浜松の建設会社は江戸時代初期の創業で現在22代目を数えています。
聞くところによれば、その建築会社は浜松城築城の大工の末裔とのことで、鷲津の本興寺の正門は、その会社が豊橋の吉田城の門を移築したものであることが記録にあります。
先代の会長は7年ほど前に亡くなられましたが、自分の宝は自分が育てた大工だと言うのが口癖でした。その会長は根っからの職人で、風格のある大棟梁のおもむきがありました。20年前に初めてお目にかかって以来、その建築会社とお付き合いをしています。
その会社との出会いは、「鹿谷の家」を作るときにいい現場担当者を探していたときです。私はほとんどの建築の施工は、建築会社そのものよりも現場監督の良し悪しで決まる、と考えています。現場担当者が仕事をよく知っていて、職人へのにらみが利くということだけでも貴重なのですが、建築的センスが良くて、いい建築が分かる現場監督というのは極めて稀なのです。いい建築をつくろうとの思いで、その現場担当者とナウハウスは、いろいろな建物を作ってきました。
その建築会社に4人の棟梁格の大工さんがいます。先代の会長の自慢の宝です。この大工さんが、かわるがわる私の現場を受け持ってくれています。それぞれが個性豊かですが、きっちりと伝統の技術を持っていて、ナウハウスの新しい発想の建築を実現してくれています。設計者はこの大工さんの腕を生かすのがポイントです。現場をやってくれた大工さんが、最後に出来上がった建物を見て、仰天するのも私の楽しみです。三ケ日の「隙屋」などは、大工さんがこんな風に化けるのかといって唖然としていたのを思い出します。
大工さんが森の中から出て、他人事のように全体を見ることは、客観化としてとてもいいことです。建築工事では、大工さんは仕上げの段階ではもう現場にはいないので、竣工の姿を見ることは稀なのです。ひとり親方の大工さんの現場は別ですが、建設会社の大工さんは完成した建物を意外と見ていないのです。
そこでナウハウスは引渡しの前に現場見学会をやることにしました。土工事から仕上げ工事までの職人を集めて、明るいときから暗くなるまでみんなで完成した建物を見学します。その後、ナウハウスの宴会場で反省会を開いて意見を交換し、その現場でいちばん功績のあった、現場MVPをみんなで選ぶのです。竣工した建築をしっかり見ることは、現場を担当する大工さんや職人さんが、図面の段階で建築のイメージを理解することに大変役に立っています。
大工さんが建設会社の正社員であると言うことは、その仕事の内容がよくなるということなのです。請け負った建設会社の下職として入っていたり、ひとり親方が仕事を請けていたりしますと、工程を考えるとどうしてもはしょりがちになります。ていねいな仕事をすることと工程と利益はいつも三つ巴の関係です。
一方、工程と会社の利益を考えなければならない現場担当者は、いい仕事を要求するナウハウスと大工さんで大変ですが、いい建築を理解する建築センスによって、老舗の建設会社に恥じないプライドを優先してくれています。作る数は限られても、いい建築を残そうという考え方です。こんな建設会社が浜松にあると言うのは、みなさまにとっても幸運なことだと思っています。
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