ナウハウス所長の鈴木です。今何を感じ、どのように建築に向き合っているのかを伝えていければと思います。
ナウハウス一級建築士の高橋です。設計を通して感じたことや現場の進捗を気軽に綴っていきたいと思います。
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TEL.053-461-3408
天然の住宅展示場
2006-12-29
「馬込の家」が完成しました。敷地は新たに区画整理がされたイーストタウンの東第二地区の中で、静岡文化芸術大学や東小学校、野口公園といった教育文化ゾーンの南側にあります。この区画の住宅の工事は、4月からいっせいに始まり、現在はできたての住宅と工事中の現場が混在しています。官公庁街区の東隣ですので、都市型の住宅の街並みが並ぶと思っていましたが、どういうわけか、郊外に建つような住宅や運送業の倉庫が混在していて、美しい街並みにはなっていません。
整然とした碁盤の目状の舗道付の広い道路に、思い思いの建物が建っています。まとまった街の雰囲気がなく、なにかぎくしゃくしています。建築の設計者は既設の街並みの中に新しい建物を計画するのが普通で、新築でもその建物が昔からあったかのように、地域になじませて建てるのが設計者の腕前だと思っていました。区画整理が終わって更地が一気にニュータウンになるのは、唐突でかなり荒っぽいことのように思います。都市計画法や建築基準法だけのルールだけでは統一感のある街並みはとうてい無理なことだと思いました。こんなふうに街ができていいのかと疑問に思います。
あけてびっくり玉手箱の状態になって、周囲の住宅を眺めてみますと、これが住宅展示場の雰囲気に似ているのです。住宅展示場はショールームですから、街並みのことなどあまり考えていないことは理解できます。、住宅メーカーは抽選にしたがって区画を選び、自社の主力商品を並べていきます。自社の個々の住宅の魅力をアピールすることは当然のことです。しかし地域を構成する一要素となる実際の住宅を建てる場合は、地域性を無視し、好みだけで住宅を建ててはうまくいかないと思うのです。街並みができたとき、個が群になる相乗効果で、個々の住宅がさらに輝くことができると思うのです。
設計者がもっと地域性を考えて、してはいけないことをしなければ、もっと統一感のある街になったと思います。心ある建築設計者ならば、クライアントからの切実な要求に答えることで余裕がない場合でも、設計した建物がその地域になじむことを本能的に考えているはずです。この「納まり」という感覚が設計のプロの基本であり、おとなの感覚であると思っています。
開き直って「馬込の家」は「天然の住宅展示場」に建てられていると考えてみることにしましょう。この家は、過密の中で住まなければならない街の中でも、3世帯の家族がゆったりと生活できる住宅として設計しました。周囲がどのように変わろうとも長く住み継いでいくことができる家です。前面は駐車場として間口いっぱいを開けてあります。街の潤いとなる植栽は、入口となる光井戸の中庭を中心に施し、両隣の境界にも緑を植えて、建物どうしの潤滑油としました。「馬込の家」の顔となる正面は、新緑の季節になれば緑のスクリーンが溶接鉄筋の格子の上にできていくはずです。ちょうど前面道路を隔てたところが旧馬込町の新築の公会堂で、屋台置場もあります。多くの人が集まる浜松祭りのときには「馬込の家」の駐車場が開放されたらいいなと考えています。道路とあわせればちょっとした広場です。こんなふうに地域とつながっていってくれたら、この家がここにある意味がもっと出てくるのではないかとい思います。この土地ならではの立地の意味を考えることは、建築本体を考えることと同じくらい大事なことです。頼まれもしないことを考え、建築をその土地にしっくり納めることは建築家の仕事です。納まっている建築はこの「天然の住宅展示場」でもしっかりとした存在感を持っていると信じております。
みなさん、よいお年を!
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