ナウハウスには住宅メーカーへの不満がある方が相談に来ます。ライフスタイルに合わない。狭小・変形敷地にたてられない。規格から外れるとコストアップになる。デザインが画一的すぎる。各段階で担当者が異なる。多額の営業費用が価格に上乗せされている、等々。
実は家づくりにはコツがあります。夢を現実にするため、目的をはっきり決めることです。家づくりで望むことをよく考え、大切な順に具体的に、きちんと設計者に伝えることです。解決すべき問題を共有して力を合わせることこそ、夢を現実にできるコツです。
「K・HOUSE」はグラフィック・デザイナーが施主です。第一の要求はまず予算内に収まること。そして、コンパクトだが機能的な、アトリエ付の家であること。さらに、狭小敷地に対して建蔽率40%、1mの壁面線の後退の、ぎりぎりの法的規制をクリヤーすること。4番目には、入口の前にある、高圧線鉄塔及び上空を通る高圧線の処理、5番目には南側隣地の産業廃棄物処理のコンテナへの対応、といった数々の難問です。壁面線の後退を逆手にとってコートハウスとし、採光を工夫して屋上に憩いのコートを作りました。明確な要求がこの家を支えています。
「おいしい家」は料理評論家がクライアントです。住宅メーカーに不満があってナウハウスに見えました。要求は予算内に納まること。150坪の敷地に、6戸のワンルームマンションと2世帯住宅を配置すること。食べることが大好きな家族で、キッチンがステージであり、レストランで食事をする雰囲気があること。私鉄が隣接しているので、騒音対策を念入りにすること。8台の駐車場で濡れずに乗降ができ、住民に人気があります。キッチンでは料理教室も開かれ、オーナーの望んでいた夢を実現しました。住宅メーカーにはできないことです。
「神田の家」はランチュウの飼育の専門家の家です。この家の第一の要求はローコスト。平面計画をシンプルにし、面積を制限しました。狭苦しさを感じないように、逆にグレーゾーン(半外部)をたっぷり取りました。4台分の駐車場は造園計画の一部です。外壁はガルバニウム鋼板やサイディングのアクリル系塗料の吹き付け、建具や枠に既製品を多用してコストを抑えました。玄関の家具の下足入れをやめて、浅い収納壁としましたが、かえって広く、すっきりしました。ローコストを第一の目的とはっきり決めて住まい手と設計者が協力し、逆に副産物を得ました。