ナウハウス所長の鈴木です。今何を感じ、どのように建築に向き合っているのかを伝えていければと思います。
ナウハウス一級建築士の高橋です。設計を通して感じたことや現場の進捗を気軽に綴っていきたいと思います。
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JIA新人賞公開審査
2008-10-20
JIA建築家大会2008東北が「風土・建築・まち」をテーマにして、仙台で開催されました。その中で、JIA新人賞公開審査が開かれ、「隙屋」もノミネートされていましたので、プレゼンテーションに参加しました。13作品のプレゼンが行われ、「隙屋」が最初でした。幸いにもその結果、「隙屋」は現地審査対象作品の6作品に選ばれることができました。以下がナウハウスのプレゼンの内容です。
現代の住宅で私がつねづね感じていることが3つあります。
①現代の住宅があまりにも一律的につくられ、高気密・高断熱が万能だと思われていることです。目先の快適を求め過ぎ、自然から離れ、自然を破壊しています。住まいは至れり尽くせりでなくていいと思います。設備より建築、建築より人間の感性に重きを置いた住まいをつくることもひとつの方法ではないかと思います。
②いい住まいというのは地域ごとにあると思います。住まいは「地域の自覚と自信」に基づいてつくられるもので、それぞれの地域の良さを見つけて、その地域でしか成り立ちえない建築を見つけることが、建築家の役割であると思います。
③現代の建築のデザインに「おおらかさ」や「のびやかさ」がないことが気になります。クライアントが建築写真家でしたので、コリに凝った建築を見ることが多く、小さなデザインにとても疲れているようでした。そこで住まいには「現代の民家」といったアノニマスな要素のある建築がふさわしいのではないかと考えました。
具体的な説明をさせていただきます。
・温暖な浜名湖なら「隙間だらけの納屋」でも住めるのではないかというのがこの家の出発点です。
・クライアントが幼少の頃、小田原で「隙間だらけの納屋」に住んだことがあるという原体験と「チャレンジ精神」のおかげでこの家が実現しました。
・クライアントは先に申しましたように建築写真家で東京と関西を往復しています。中間地点の浜松でひと休みしてまた仕事に出かけるという生活ですので敷地が高速道路のインターチェンジに近いということはとても重要なことでした。
・建物は湖岸の海抜15mの高台にあって浜名湖を一望できます。それは逆に湖岸の風景として大変目立つということですので、まるで昔からあったかのように思えるランドスケープになるように考えました。ランドスケープは人工物と自然があっていっそう美しくなるものだと思います。
・上階は地場の天竜杉の軸組みの開放的な吹抜けで、逆に地階はトンネルを通して光と風が来る閉鎖的な空間です。トンネルからは時には潮騒や潮の香りまで運ばれてくることに驚きました。トンネルの先のステージ空間は4畳半くらいのスペースで大変居心地のいいところです。
・この建物にはエアコンはありません。夏には上部の窓を遠隔操作しますと、トンネルやテラスから風が流れ込んできます。冬には窓を閉めて隙間からの光を入れて内部を一日中暖めますとけっこう蓄熱をします。ひと冬を過ごしてみましたが十分暖かく住むことができました。
・屋根に「離瓦」という新しい瓦を使っています。瓦が横につながっていないために風通しが良く、屋根の温度を下げ、夕立の後でも蒸れません。ちょうどひとつひとつの瓦が置屋根の役目をしています。下屋の「離瓦」にはスリットに透明板を入れて光が入るようにしています。窓際や浴室に木漏れ日のような光が入って静かなたたずまいをつくっています。月夜の晩もよく光が入ります。「離瓦」を使うことによって伝統の瓦技術を生かし現代に通じるデザイン性と新機能を見つけることができたと思います。
・夜になると暮らしの光が建築の原型を浮かび上がらせます。周囲が暗いのでよりいっそう明るく見えます。この家に来た人はなぜか軽い興奮があり、話が弾みます。空間が触媒の役目をしてくれているのではないかという気がしております。
最後に4つほど付け加えさせていただきます。
①ポリカーボネートを外壁に使っていますが昼間には光の反射によってとてもメタリックな素材に見えて、安っぽい感じはありません。
②南からのエレベーションで、地下室の開口が大きく、プロポーションを崩しているようで気になるようですが、それは広角レンズで撮影しているためであって、実際にはそれほど開口部は強調されていません。ミカンの木がもっと育てば、開口部はほとんど目立たなくなるはずです。
③昼から夜への変化がとてもドラマチックです。本物の夜景をぜひ見ていただきたいと思います。
④浜名湖は「月の名所」と言われております。あるとき、ようやくその理由が分かりました。真昼のように輝いている浜名湖があるからこそ、「月の名所」になっているのです。
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