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ナウハウス所長の鈴木です。今何を感じ、どのように建築に向き合っているのかを伝えていければと思います。
ナウハウス一級建築士の高橋です。設計を通して感じたことや現場の進捗を気軽に綴っていきたいと思います。

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JIA静岡の建築ウオッチングin信州
2008-09-30
JIA静岡の建築ウオッチングで信州を訪ねました。2007年の日本建築学会賞作品賞の「茅野市民館」が目的ですが、同じく市民会館として2004年竣工の「まつもと市民・芸術館」も見学しました。時の流れを感じざるをえませんでした。
「茅野市民館」は2001年に古谷誠章氏がプロポーザルで設計者に選ばれたものです。いい建築をつくるために、これでもかというエネルギーを投じています。審査の一部始終をすべて住民に公開する形のプロポーザルの後、事業の速度に合わせて4年間の月日をかけて設計が行われました。
古谷氏が目を付けたのは、敷地が本線を挟んで中央本線茅野駅に接していることでした。散漫な人の流れを、駅と市民会館を結びつけて中央本線を内部化しました。そうして茅野市のへそとなる、「密度の高い場」を作ったことは決定的な建築的アイディアで、この設計をみごとに離陸させています。「茅野市民館」は90mのスロープが付いた図書館が線路を挟み、茅野駅と並列に置かれ結ばれています。建築の長さは列車のスピードに見合ったスケールになっています。図書館のガラスのファサードを通して駅の様子が見えます。駅からはガラスの中の図書館の賑わいを窺うことができます。そのときカラフルな特急が駅に滑り込んで来ました。互いの視線の中に列車が現れ、内部空間はさらに活性化されています。分かりやすい実用的レベルの提案から、建築たらしめる空間的レベルの提案まで、新発見を含めて流れるような空間的解決がありました。
この建築には公共建築に無くてはならない人の流れが常にあります。ホール、美術館、市民ギャラリー、レストランがひとつのロビーによって結ばれ、そのロビーは芝生の中庭へと広がっています。ここにも建築的アイディアが冴えています。ガラスの多用が環境負荷を増大させているという非難もありますが、外からも中からも透けて見えることがこの建築に大きな意味があることを理解するなら、その指摘は二次的なものでしかないでしょう。
公共建築をめぐる社会的環境は大きく変化しています。「茅野市民館」の完成までのいきさつを見ますと、公共建築は建築家としてのより綿密な専門的検討と、より緊密な市民との共同作業が求められていることを感じます。
「まつもと市民・芸術館」は作られ方が少し違います。コンペで勝ち取ったという作品で、なんと180億円以上の総工事費がかかっています。伊東豊雄という建築家の作家性が強く出ている「せんだいメディアテーク」以来の大作です。
狭い敷地にこれだけのボリュームの建築をうまく入れていることは見事ですし、周囲の街並みへの配慮にも感心しました。それゆえ、ガラスが象嵌されたGRC板の外壁が、細胞のように柔らかな曲面でなければならないこともよく分かります。限られた形式から逸脱できないコンサートホールを核と考えれば、異常に大きくて長いエントランスとホワイエは流動体の細胞液で、ミトコンドリアがその中を漂っているというイメージなのかもしれません。
「まつもと市民・芸術館」は、おおわざを期待されている建築家が期待に応えた力作だと思います。しかしこれが新しい建築なのだろうかとも思います。「せんだいメディアテーク」でも思ったのですが、身振りが大げさすぎる感があります。話題作というおおわざでなくても、切れのいい足払いで一本!もいいと思います。最近、デザインをうるさく感じることがあって、アノニマスがいいと思うときがあります。
二つの市民会館と対照的なのが無暖房介護サービス施設の「桜ハウス玉川」です。RC造の躯体を厚さ30cmの高性能断熱材でシールドするだけで、寒冷地にもかかわらず、年間を一定の温度で過ごせてしまう建築です。市民会館とは対照的に、省エネのためだけの実験建築で、断熱材と高性能な熱交換換気システムが要です。省エネと経営とお年寄りが短絡しています。黒と白ばかりでなく、無暖房にこだわらないグレーゾーンが混在されればもっと開放的になるのではないでしょうか。両極端の建築が寒冷地の茅野市にあります。目的が違えば考え方が違いますので、何の不思議もないことかもしれません。
雨の降る中、JIA静岡の総勢25名が三つの建物を大急ぎでウオッチングしてきました。ぐったりと疲れてバスに乗り込みましたが、まさかこのバスが居酒屋バスに変わるとは予想もしませんでした。ビールやら焼酎やらおつまみが出て、バスは宴会場に変わりしました。気の利いた係りの方に感謝の気持ちでいっぱいです。
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