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マキ囲いの家
「マキ囲いの家」は遠州灘の近く、マキの連なる旧道沿いの村落の中にある。マキの生け垣は遠州の農村の景観を特徴づけている。冬には「遠州のからっ風」を防ぎ、夏には日影をつくり出す。そしてそれは防火と防砂の知恵として、先人から受け継がれてきた。
「マキ囲いの家」は、勤めに出ている若い世帯と農業を主とする老夫婦との価値観の異なる要求を、一つにまとめたものである。機能的な二世帯住宅でありながら、昔の農家であることのアイデンティティを必要とした。南の日溜りの庭と北の防風の庭を、南北に貫く「通り庭」によって繋いでいる。そこはこの家の玄関ホールでもあり、応接の場でもある。
かつての田舎の家が「ハレ」の時にも「ケ」の時にも対応できたように、二つの和室の上座が居間に続いている。すべては同一平面上にあるが、壁と床の素材を区別することによって、「ハレ」の間と「ケ」の間をわけている。野地板は垂木を兼ねた本実加工の杉板(t=60mm)、居間の床にはセダーハード。冬期の吹抜けの欠点を補うため、居間はヒートサイクルを応用した床暖房を採用している。最小限の設備によって、自然で快適な住み心地を得る工夫をした。