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和の武の家
合気道は「和の武道」といわれている。あくまで自分を守り、自己鍛錬を追及する武道である。老若男女問わずいつでも始められるのが特徴で、争わないことを旨とし、日本古来の伝統や精神性を重視する極めて日本的な武道である。この建物は合気道を地元の人々に教えながら、地域の交流を図ろうとする女性が計画した、道場が付属した住居である。
湖西市鷲津は古代より豊かな自然に恵まれ、近代は東海道本線沿線の交通・輸送の要所として栄えていた。現代は自動車工業を中心 とした工業が盛んである。外国人の居住者も多く、国籍や年齢、性別を超えて交流できる場が必要とされていた。そんな時クライアントは人生の転機をむかえていた。自分の人生を見つめなおし、道場のない地元で合気道の指導者として第2の人生をスタートさせようと決めた。先祖から受け継いできた土地を、地域交流の場、子供たちの人間教育の場として提供し、地域の発展に役立てたいという思いからこの計画はスタートした。この建物の敷地の周囲には浜名湖が広がり、素晴らしい環境の中にある。反面、浜名湖からの風が強く、風の通り道となっていた。そこで建物自体を北風を防ぐ防風棟とし、敷地の南側を風から守った。屋根はダブルルーフとし、防水と断熱を分担させて省エネ効果を図った。
特に工夫したのは2階のバルコニーで、個室Aと道場の屋根の防水の納まりを兼ね、本来外部にあるべきバルコニーを内部に貫入させている。採光スクリーンによって採光と通風の調整を可能にし、快適な空間を獲得している。この「和の武の家」は交流の拠点として、湖西市の活性化の潤滑油と接着剤になって欲しいと願っている。