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島田の診療所
かつて、島田は東海道の宿場町であった。盛大な島田大祭は昔のにぎわいの証しである。今も一大絵巻を彩る行列が引き回され、「祭り」が地域のきずなを育んでいる。診療所は旧東海道の「本通り」に面していて、敷地は南北に細長く、典型的な宿場町の家並みの中にある。
「門」は開かれながら独立させる、二律背反的な「手だて」である。中に入ると、雑踏から診療所を隔てる駐車場の余白が広がる。
診療所は3連の切妻。切妻は甍の波動を内部に連続させている。待合は静かに広がり、息づきながら豊かな時間を提供している。患者はトップライトに導かれ、それぞれの診察室に向かう。
坪庭のある診察室は、医師と患者がコミュニケートする独立した場所である。植栽と自然光は柔らかな空気をつくる。
商店街は近隣の日常を支える昔からの店である。時代の流れには取り残されているかもしれないが、「地域のきずな」は強い。街の診療所のランドスケープに、地域に根ざし地域をつなぐ「空気」があるならば、それは地域の安心を支え、いずれ地域の活性化に変わるはずである。