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WOOD(ずだじこども園)
浜松は温暖である。恵まれた環境と建築の力で施設の機能を超えた魅力あるこども園をめざした。園児が季節で変化する太陽や風を体感し自然とふれあうしくみづくりを図った。この建築は園児の知覚を活性化させる触媒である。意匠・構造・設備の総合的なバランスで多重的な効用を狙い、素朴な環境対策で建物のエネルギー消費を最小化し、長く使われる建築を心がけた。
回廊はプログラムに答える軌跡だが、こども園の「空間のしかけ」の根幹となった。既設の幼稚園からのブリッジが入口である。西への直線廊下を主要軸線とし、廊下の南面に保育室(0歳・1歳・4歳+5歳)を置き、曲線回廊を連結して中庭を形成した。100mの回廊は悪天候時の屋内運動場でもある。
中庭は回廊によって内部化され園児たちを季節風や危険から守る。保育室(2歳・3歳)の南側の曲線回廊はいわば縁側であり、回廊と保育室の境界は透明に曖昧化され広く感じる。曲線回廊は中庭の風景が見え隠れする。時間による陰影の変化のある遊び場は園児たちを飽きさせない。
回廊の外壁は壁面透過採光である。昼は保育室や回廊そのものが明るく、夜の回廊は光壁として中庭や周囲を照らす。光壁は時刻によって内と外の認識をそっくり変える。夜の中庭は光壁による内部化された未体験ゾーンである。光は中庭を触発し、園児を誘う。光壁は本来の役目を曖昧にして明かりのない田園の灯火となり、柔らかな光が田園の景観を演出している。