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ZOOO(ずだじ幼稚園)
「ZOOO」(ずだじ幼稚園)は真言宗の仏寺が経営する幼稚園である。敷地は浜松の南東部の市街地調整区域に位置し、環境に恵まれている反面、自然の猛威も激しく、冬の「遠州のからっ風」には体ごと吹き飛ばされてしまうほどである。そこでこの計画では、園庭を囲んで敷地いっぱいに各施設を配置し、厳しい自然から子供たちを守る砦の機能をもたせた。また隣接する芳川(2級河川)の氾濫による冠水を避けるため、園庭は周辺より地盤面を上げ、園舎は高床式とし、園児の安全や土ぼこりに配慮しながら、床下換気により園庭の通風を図っている。子供たちの安全については、職員室の先生の机の配置によって子供たちへの目配りを考慮するとともに、バルコニーも手摺の細部まで工夫して安全を心がけた。子供たちにとって、空間構成そのものが、安全で楽しい遊び場となるように計画されている。園舎の外壁と屋根はガルバニウム鋼板、ポリカーボネート板、コンクリート打放し、内部はシナ合板とフローリング合板で素材を限定して工数を減らした。寿命の異なる素材の組み合わせには、交替を容易にできる工法を用い、単にローコスト化をねらっただけでなく、施設の長寿命化も考慮されている。防風と採光を兼ねた、壁状の園舎はそれぞれの保育室に光を注ぎ、冬期には貯えられた暖気が床下に送られ、パッシブな床暖房として機能している。各部屋は自然の光のみで十分な採光がとれ、広さも基準の30~50%ほど広く設計されている。進級するにつれ、成長の証として園児が自覚できるように、保育室は大きさやロフトの有無、色調などで、周囲の景観とともに、進級するごとに変化をもたせている2階の広く明るいホール(室内運動場)の奥にはおごそかに大日如来が安置されており常に子供たちを見守っていると同時に、日々の生活の中で仏に手を合わせることを教えている。運動場に出ると池や小川があり、レモンやミカン、カキといった実のなる樹木も植えられていて、季節ごとに色とりどりの花が咲き、四季の変化を直に体験できる。運動場の大きな木はシラカシで、どんぐりがたくさん実り子供たちは自然とのふれあいを楽しむことができる。南の展望フロアからは芳川の橋を渡る国道1号線が望め、トラックやバスが行き交う田園のかなたの景色
は、子供たちのお気に入りになるであろう。「ZOOO」は一見すると幼稚園には見えないかもしれない。しかしこの形態は、自然に恵まれた立地を生かし、子供たちにとって初めて経験する社会として、子供たちの想像力を喚起させることを念願においた新しい幼稚園のかたちとして意図したものである。自らの体験を通じ何かを発見し感動を覚えること、生命のつながりのダイナミズムを学ぶことは大切なことである。この幼稚園は時間と共に完成させていく施設であり、ここでの体験がいつまでも原風景として心に残る幼稚園であればと思っている。